ゲーテ詩集 生田春月訳




神性


人間は気高くあれ
慈悲深く善良であれ!
ただこの事だけが
我等の知つてゐる
すべての物から
人間を区別する

我等の予感する
かの知られざる、より高き
実体はめでたきかな?
人間は彼等に似る
彼の例は我等に教ふ
そのものを信ずることを

見よ、自然は
無感覚だ
太陽は悪をも
善をも照らす
また月も星も
善人とおなじく
悪人にも照る

風と雨とは
雷と霰とは
ざわめき鳴つて
駈け過ぎながら
誰れ彼れとなく
ひツつかまへる

運命とてもおなじく
群衆(ひとごみ)の中に
無邪気な子供の
毬毛(まきげ)を掴み
また罪造りした
禿頭(はげ)をも掴む

永遠にして偉大なる
黄銅の法則に従つて
我等すべてのものは
我等の存在の
循環を終へねばならぬ

ただ人間のみが
不可能なことをもやる
人間は差別し
選択し審判する
人間は瞬間に
永遠の光を与ふ

ただ人間のみが
悪人を罰し
癒やし、救ひ
あらゆる迷ひ、惑へるものを
結び合せて有用なものにする

我等は崇(うやま)
不滅の神を
あだかも[注:あたかもの誤り?]彼等もまた人間であつて
最大の人間もただ小事に於てのみ
為しまたは為さんと慾することを
大事に於て仕遂げるかのやうに
気高い心の人間は
慈悲深く善良であれ!
倦まず撓(たゆ)まず
益を求め、義を踏んで
かの予感してゐる実体の
表象となれ!





王者の祈祷


然り、我は世界の主だ!我を愛する
我につかへる貴族等は
然り、我は世界の主だ!我を愛する
我の支配する貴族等は
おお、大なる神よ!我を護りて
高貴と愛とに誇らしむるな





人間の感情


ああ、汝等神よ!偉大なる神々よ
かなたの広い天にゐますものよ!
この地上なる我等に与へたまへ
しつかりした心とひるまぬ勇気とを –
おお、然らば我等は汝等に、善き神々よ
汝等のいと高く広い天をまかせよう!





この本を、全文縦書きブラウザで読むにはこちらをクリックしてください。
【明かりの本】のトップページはこちら

 
 
 
以下の「読んだボタン」を押してツイッターやFacebookを本棚がわりに使えます。
ボタンを押すと、友人にこの本をシェアできます。
↓↓↓ 

Facebook Twitter Email
facebooktwittergoogle_plusredditpinterestlinkedinmailby feather

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">