ふと、バルナバスは立ちどまった。自分たちはどこにいるのだろうか。バルナバスはKと別れるのだろうか。そんなことはうまくできないだろう。Kはバルナバスの腕をしっかとつかんでいたので、ほとんど自分の身体が痛いほどだった。それとも、信じられないことが起って、二人はもう城のなかか、城の門の前まできているのだろうか。しかし、Kの知る限りでは、彼らは登り道をやってきたのではなかった。それともバルナバスは、気づかぬうちに登っていく坂道を案内してきたのだろうか。
「ここはどこかね?」と、Kは低い声で、相手によりもむしろ自分に向ってきくような調子でいった。
「うちですよ」と、バルナバスは同じような調子でいった。
「うちだって?」
「滑らないように注意してください。下り坂ですから」
「下り坂だって?」
「もうほんの二、三歩です」と、相手はつけ加えたが、もう一軒の家のドアをノックしていた。
一人の娘がドアを開けた。二人は大きな部屋の入口に立ったが、その部屋はほとんどまっ暗だった。というのは、左手の奥の机の上に小さな石油ランプが一つかかっているだけだった。
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