第五章
村長との話合いは、ほとんどK自身が不思議に思ったくらいだが、彼にはほとんど気にかからなかった。彼はその点を、これまでの経験によると伯爵の役所との職務上の交渉がきわめて単純なものであったのだから、今度もたいしたことはないと思われるのだろう、ということで自分に説明してみた。それは一つには、彼の件の取扱いに関しては、外見上は彼にきわめて好都合な一定の原則がもうこれっきりと思われるほど決定的に出されてしまったためであり、もう一方では、役所には賞讃すべき統一性が保たれているためであった。その統一性は、ちょっと見ると統一性がないようなところにおいてとくに完璧(かんぺき)なもののように感じられるのであった。Kはときどきこうしたことばかり考えるのだったが、そういうときにも、自分の置かれている状態が満足すべきものと思うことからほど遠いわけではけっしてなかった。もっとも、こうした満足の快感に襲われたあとでは、たちまち自分に、これには危険がひそんでいるのだぞ、といい聞かせるのだった。
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