ランボオ詩集 中原中也訳



 盗まれた心


私の悲しい心は船尾に行つて涎((よだれ))を垂らす、

私の心は安い煙草にむかついてゐる。

そしてスープの吐瀉(げろ)を出す、

私の悲しい心は船尾に行つて涎を垂らす。

一緒になつてげらげら笑ふ

世間の駄洒落に打ちのめされて、

私の悲しい心は船尾に行つて涎を垂らす、

私の心は安い煙草にむかついてゐる!

諷刺詩流儀の雑兵気質の

奴等の駄洒落が私を汚した!

舵の処(とこ)には壁画が見える

諷刺詩流儀の雑兵気質の。

おゝ、玄妙不可思議の波浪よ、

私の心を浚((さら))ひ清めよ、

諷刺詩流儀の雑兵気質の

奴等の駄洒落が私を汚した。

奴等の噛煙草(たばこ)が尽きたとなつたら、

どうすれあいいのだ? 盗まれた心よ。

それこそ妙な具合であらうよ、

奴等の煙草が尽きたとなつたら。

私のお腹(なか)が跳び上るだらう、

それで心は奪回(かへ)せるにしても。

奴等の噛煙草(たばこ)が尽きたとなつたら、

どうすれあいいのだ? 盗まれた心よ。





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