ランボオ詩集 中原中也訳



 母音


Aは黒、Eは白、Iは赤、Uは緑、Oは赤、母音たち、

おまへたちの穏密な誕生をいつの日か私は語らう。

A、眩ゆいやうな蠅たちの毛むくぢやらの黒い胸衣(むなぎ)は

むごたらしい悪臭の周囲を飛びまはる、暗い入江。

E、蒸気や天幕(テント)のはたゝめき、誇りかに

槍の形をした氷塊、真白の諸王、繖形花顫動((さんけいくわせんどう))、

I、緋色の布、飛散(とばち)つた血、怒りやまた

熱烈な悔悛に於けるみごとな笑ひ。

U、循環期、鮮緑の海の聖なる身慄ひ、

動物散在する牧養地の静けさ、錬金術が

学者の額に刻み付けた皺の静けさ。

O、至上な喇叭((らつぱ))の異様にも突裂(つんざ)く叫び、

人の世と天使の世界を貫く沈黙。

――その目紫の光を放つ、物の終末!





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