ランボオ詩集 中原中也訳



 フォーヌの頭


緑金に光る葉繁みの中に、

接唇(くちづけ)が眠る大きい花咲く

けぶるがやうな葉繁みの中に

活々として、佳き刺繍(ぬひとり)をだいなしにして

ふらふらフォーヌが二つの目を出し

その皓((しろ))い歯で真紅(まつか)な花を咬んでゐる。

古酒と血に染み、朱(あけ)に浸され、

その唇は笑ひに開く、枝々の下。

と、逃げ隠れた――まるで栗鼠、――

彼の笑ひはまだ葉に揺らぎ

鷽((うそ))のゐて、沈思の森の金の接唇(くちづけ)

掻きさやがすを、われは見る。





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