カシスの川
カシスの川は何にも知らずに流れる
異様な谷間を、
百羽の烏が声もて伴(つ)れ添ふ……
ほんによい天使の川波、
樅の林の大きい所作に、
沢山の風がくぐもる時。
すべては流れる、昔の田舎や
訪はれた牙塔や威儀張つた公園の
抗(あらが)ふ神秘とともに流れる。
彷徨((さまよ))へる騎士の今は亡き情熱も、
此の附近(あたり)にして人は解する。
それにしてもだ、風の爽かなこと!
飛脚は矢来に何を見るとも
なほも往くだらう元気に元気に。
領主が遣はした森の士卒か、
烏、おまへのやさしい心根(こころね)!
古い木片(きぎれ)で乾杯をする
狡獪な農夫は此処より立去れ。
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