ランボオ詩集 中原中也訳



 カシスの川


カシスの川は何にも知らずに流れる

  異様な谷間を、

百羽の烏が声もて伴(つ)れ添ふ……

  ほんによい天使の川波、

樅の林の大きい所作に、

  沢山の風がくぐもる時。

すべては流れる、昔の田舎や

  訪はれた牙塔や威儀張つた公園の

抗(あらが)ふ神秘とともに流れる。

  彷徨((さまよ))へる騎士の今は亡き情熱も、

此の附近(あたり)にして人は解する。

  それにしてもだ、風の爽かなこと!

飛脚は矢来に何を見るとも

  なほも往くだらう元気に元気に。

領主が遣はした森の士卒か、

  烏、おまへのやさしい心根(こころね)!

古い木片(きぎれ)で乾杯をする

  狡獪な農夫は此処より立去れ。





この本を、全文縦書きブラウザで読むにはこちらをクリックしてください。
【明かりの本】のトップページはこちら

 
 
 
以下の「読んだボタン」を押してツイッターやFacebookを本棚がわりに使えます。
ボタンを押すと、友人にこの本をシェアできます。
↓↓↓ 

Facebook Twitter Email
facebooktwittergoogle_plusredditpinterestlinkedinmailby feather

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">