ランボオ詩集 中原中也訳



 朝の思ひ


夏の朝、四時、

愛の睡気がなほも漂ふ

木立の下。東天は吐き出だしてゐる

   楽しい夕べのかのかをり。

だが、彼方(かなた)、エスペリイドの太陽の方(かた)、

大いなる工作場では、

シャツ一枚の大工の腕が

   もう動いてゐる。

荒寥たるその仕事場で、冷静な、

彼等は豪奢な屋敷の準備(こしらへ)

あでやかな空の下にて微笑せん

   都市の富貴の下準備(したごしらへ)。

おゝ、これら嬉しい職人のため

バビロン王の臣下のために、

ニュスよ、偶には打棄(うつちや)るがいい

   心驕((おご))れる愛人達を。

   おゝ、牧人等の女王様!

 彼等に酒をお与へなされ

 正午(ひる)、海水を浴びるまで

彼等の力が平静に、持ちこたへられますやうに。





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