ランボオ詩集 中原中也訳



 飢餓の祭り


  俺の飢餓よ、アンヌ、アンヌ、

   驢馬に乗つて失せろ。

俺に食慾(くひけ)があるとしてもだ

土や礫(いし)に対してくらゐだ。

Dinn! dinn! dinn! dinn! 空気を食はう、

岩を、炭を、鉄を食はう。

飢餓よ、あつちけ。草をやれ、

  音(おん)の牧場に!

昼顔の、愉快な毒でも

  吸ふがいい。

乞食が砕いた礫(いし)でも啖(くら)へ、

 教会堂の古びた石でも、

 洪水の子の磧の石でも、

 寒い谷間の麺麭((パン))でも啖へ!

 飢餓とはかい、黒い空気のどんづまり、

   空鳴り渡る鐘の音。

 ――俺の袖引く胃の腑こそ、

   それこそ不幸といふものさ。

 土から葉つぱが現れた。

 熟れた果肉にありつかう。

 畑に俺が摘むものは

 野蒿苣(のぢしや)に菫だ。

   俺の飢餓よ、アンヌ、アンヌ、

   驢馬に乗つて失せろ。





この本を、全文縦書きブラウザで読むにはこちらをクリックしてください。
【明かりの本】のトップページはこちら

 
 
 
以下の「読んだボタン」を押してツイッターやFacebookを本棚がわりに使えます。
ボタンを押すと、友人にこの本をシェアできます。
↓↓↓ 

Facebook Twitter Email
facebooktwittergoogle_plusredditpinterestlinkedinmailby feather

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">