ランボオ詩集 中原中也訳



 タルチュッフの懲罰


わくわくしながら、彼の心は、恋慕に燃えて

僧服の下で、幸福おぼえ、手袋はめて、

彼は出掛けた、或日のことに、いとやさしげな

黄色い顔して、歯欠けの口から、信心垂らし

彼は出掛けた、或日のことに――共に祈らん(オレムス)――

と或る意地悪、祝福された、彼の耳をば手荒に掴み

極悪の、文句を彼に、叩き付けた、僧服を

じめじめの彼の肌から引ツ剥ぎながら。

いい気味だ!……僧服の、釦((ボタン))は既に外(はづ)されてゐた、

多くの罪過を赦してくれた、その長々しい念珠をば

心の裡にて爪繰りながら、聖タルチュッフは真(ま)ツ蒼(さを)になつた。

ところで彼は告解してゐた、お祈りしてゐた、喘((あへ))ぎながらも。

件((くだん))の男は嬉々として、獲物を拉つてゆきました。

――フツフツフツ! タルチュッフ様は丸裸か。

〔一八七〇、七月〕




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