ランボオ詩集 中原中也訳




 災難


霰弾((さんだん))の、赤い泡沫(しぶき)が、ひもすがら

青空の果で、鳴つてゐる時、

その霰弾を嘲笑(あざわら)つてゐる、王の近くで

軍隊は、みるみるうちに崩れてゆく。

狂気の沙汰が搗((つ))き砕き

幾数万の人間の血ぬれの堆積(やま)を作る時、

――哀れな死者等は、自然よおまへの夏の中、草の中、歓喜の中、

甞((かつ))てこれらの人間を、作つたのもおゝ自然(おまえ)!――

祭壇の、緞子((どんす))の上で香を焚き

聖餐杯((せいさんはい))を前にして、笑つてゐるのは神様だ、

ホザナの声に揺られて睡り、

悩みにすくんだ母親達が、古い帽子のその下で

泣きながら二スウ銅貨をハンケチの

中から取り出し奉献する時、開眼するのは神様だ

〔一八七〇、十月〕




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