ランボオ詩集 中原中也訳



 わが放浪


私は出掛けた、手をポケットに突つ込んで。

半外套は申し分なし。

私は歩いた、夜天の下を、ミューズよ、私は忠僕でした。

さても私の夢みた愛の、なんと壮観だつたこと!

独特の、わがズボンには穴が開(あ)いてた。

小さな夢想家・わたくしは、道中韻をば捻つてた。

わが宿は、大熊星座。大熊星座の星々は、

やさしくささやきささめいてゐた。

そのささやきを路傍(みちばた)に、腰を下ろして聴いてゐた

あゝかの九月の宵々よ、酒かとばかり

額(ひたひ)には、露の滴(しづく)を感じてた。

幻想的な物影の、中で韻をば踏んでゐた、

擦り剥けた、私の靴のゴム紐を、足を胸まで突き上げて、

竪琴((たてごと))みたいに弾きながら。





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