ランボオ詩集 中原中也訳



 夕べの辞


私は坐りつきりだつた、理髪師の手をせる天使そのままに、

丸溝のくつきり付いたビールのコップを手に持ちて、

下腹突き出し頸反らし陶土のパイプを口にして、

まるで平(たひら)とさへみえる、荒模様なる空の下。

古き鳩舎に煮えかへる鳥糞(うんこ)の如く、

数々の夢は私の胸に燃え、徐かに焦げて。

やがて私のやさしい心は、沈欝にして生々(なま/\)し

溶(とろ)けた金のまみれつく液汁木質さながらだつた。

さて、夢を、細心もつて嚥((の))み下し、

身を転じ、――ビール三四十杯を飲んだので

尿意遂げんとこゝろをあつめる。

しとやかに、排香草(ヒソフ)や杉にかこまれし天主の如く、

いよ高くいよ遐((とほ))く、褐色の空には向けて放尿す、

――大いなる、ヘリオトロープにうべなはれ。





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