「酔っ払っているんだ」と、だれかがいった。
「あんた、だれだね?」と、偉そうな声が叫んだが、老人に向けられたらしかった。「なぜその男をつれこんだんだ? 小路をのろのろ歩いているやつは、みんなつれこんでいいのか?」
「私は伯爵の土地測量技師です」と、Kはいって、なおも姿の見えない者に向って言いわけしようとした。
「ああ、測量技師なのね」と、一人の女の声がいい、それから完全な沈黙がつづいた。
「あなたがたは私をご存じなんですね?」と、Kはたずねた。
「知っていますとも」と、短く同じ声がいった。Kを知っているということは、そうかといってKに対して好感をもたせてはいないようだった。
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