しかし、Kはまもなく小路に立っていた。男たちは戸口のところからKを監視している。また雪が降ってきた。それでも少しは明るくなったように思われた。髯面の顔がいらいらして叫んだ。
「どこへいこうっていうのかい? こっちは城へいくんだし、こっちは村へいくんだ」
Kはその男には返事をしなかった。で、この男よりはまさってはいるけれども、もったいぶっているやつだとKには思われるほうの男に向って、こういった。
「あなたはなんというかたで? 休ませていただいたお礼はどなたに申し上げたらいいんです」
「なめし革屋のラーゼマンです」という返事だった。「でも、あなたはだれにも礼などいう必要はありませんよ」
「そうですか」と、Kはいった。「おそらくまたお会いできるでしょう」
「できないと思いますね」と、男はいった。
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