「どこからです?」と、Kがたずねた。
「宿屋からです」と、彼女がいう。
それはKにとってありがたかった。そこで彼は、ビールはもってこないで下さい、そのかわり宿屋まで私についていって下さい、宿屋にまだ重要な仕事が残っていますから、と彼女に頼んだ。ところが、彼女はそんなに遠くの彼の宿屋までいくのではなく、ずっと近い紳士荘へいこうとしているのだ、ということがわかった。それでもKは、彼女につれていくように頼んだ。おそらくそこに泊まることができるだろう、その寝場所がどんなものであろうと、この家のいちばんましなベッドよりもましだろう、と考えたのだった。オルガはすぐには返事をせず、テーブルのほうを振り返った。そこでは弟がもう立ち上がっていて、承知したようにうなずき、いうのだった。
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