「あなたは、そう、測量技師さんでしたね」と、彼はゆっくりといった。「二、三日前に教会前の広場でお話ししたあのよそのかたでしたね」
「そうです」と、Kは手短かにいった。あのときは一人ぽっちであったために我慢していたのだが、こんな言葉をこの自分の部屋で黙って聞いている必要はないのだ。彼はフリーダのほうを向き、これからすぐしなければならない大切な訪問があるのだが、それにはできるだけよい身なりをしていかなければならない、と、彼女に相談をもちかけた。フリーダはKにそれ以上たずねもしないで、ちょうど新しいテーブル・クロスを夢中になって調べている二人の助手たちにすぐ声をかけ、Kがすぐ脱ぎ始めた服と靴とに下の内庭で念入りにブラシをかけるように、と命じた。彼女自身は一枚のシャツをかかっている紐から取って、それにアイロンをかけるために下の台所へ急いで降りていった。
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