「あの人のいうことを信じてはだめよ」と、ペーピーはいった。「フリーダは、だれだってたやすくはできないほど自分を抑えることができるのよ。打ち明けまいと思うことは、どうしても打ち明けないの。それでいて、あの人に打ち明けることがあるなんて、だれも全然気づかないのよ。あたしはこれでもう二、三年のあいだあの人といっしょにここで働いているんですし、いつでもあたしたちは同じベッドに寝ていたんだけれど、あの人とはうちとけていないのよ。きっとあの人は今ではもうあたしのことなんか思っていないわ。あの人のたった一人の友だちといえば、たぶん、橋亭の年とったおかみさんでしょう。それがまたいかにもあの人らしいわ」
「フリーダは私の婚約者ですよ」と、Kはいって、ついでにドアののぞき孔を探ってみた。
「知っていますわ」と、ペーピーはいった。「だからこんなことをお話しするんです。そうでなければ、あなたにとってはなんの意味もないでしょう」
「わかりましたよ」と、Kはいった。「あんな心を他人に打ち明けることのない女の子を私が手に入れたことは、私の自慢にしていい、というんですね」
「そうよ」と、娘はいって、フリーダのことについて自分とKとのあいだに秘密の同意を得たかのように、満足げに笑うのだった。
この本を、全文縦書きブラウザで読むにはこちらをクリックしてください。
【明かりの本】のトップページはこちら
以下の「読んだボタン」を押してツイッターやFacebookを本棚がわりに使えます。
ボタンを押すと、友人にこの本をシェアできます。
↓↓↓