「でも、いってしまったら、待っている人と会えないことになります」と、Kはいって、身体をぴくっと動かした。起ったいっさいのことにもかかわらず、自分がこれまでに手に入れたものは一種の所有物のようなものであり、なるほどまた見かけだけ確保しているにすぎないけれども、それでもいいかげんな命令なんかで手放すことはないのだ、という感情をKはもった。
「ここでお待ちになろうと、いかれようと、どっちみちその人には会えませんよ」と、その人がいう。なるほど自分の意見はきびしく守っているが、Kの考えかたには明らかに譲歩しているのだった。
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