「もちろんですとも」と、彼女はゆっくりといったが、何か別な考えにふけっているらしく、うわの空でつけ加えた。「どうしてお前さんなんかがここに残るっていうの?」
だが、みんな台所へ引き下ってしまったときにも、――助手たちも今度はすぐそのあとについていった。とはいっても、一人の女中の尻を追っていったのだった――ガルディーナはそれでも注意深くて、ここで話すことは台所にまる聞こえだと見て取った。というのは、この仕切り部屋にはドアがなかったのだ。それで彼女は、全員に台所からも立ち去るように命じた。すぐ彼女のいうとおりになった。
「測量技師さん」と、ガルディーナが次にいった。「戸棚のなかのすぐ手前にショールがかかっています。それを取って下さいな。それを身体にかけたいんです。羽根ぶとんは我慢できないわ。息苦しくて」そして、Kがそのショールをもっていくと、いった。「ごらんなさいな、このショールはきれいでしょう?」
それはKにはありふれた毛織の布のように見えた。ただお世辞だけのために一度さわってみたが、一言もいわなかった。
「そうよ、これはきれいなショールだわ」と、ガルディーナはいって、それにくるまった。今度は落ちついたように身体を横たえていた。すべての苦悩が彼女から取り去られたように見えた。それに、横になっていたために乱れてしまった頭髪にまで気がついて、ちょっとのあいだ身体を起こし、ナイトキャップからはみ出た髪形をなおしていた。豊かな髪だった。
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