フランツ・カフカ 城 (11〜15章)


 まもなく二人は体操場の窓の前に現われ、窓ガラスをたたいて、叫ぶのだった。だが、その言葉はもう聞き取れなかった。けれども、二人もそこに長いあいだはとどまっていなかった。この深い雪のなかでは、彼らの不安な気持が求めるままに跳び廻ることはできなかったのだ。そこで彼らは校庭の格子塀(こうしべい)のところへ急いでいき、そこの石造の土台の上に跳びのった。そこでは、ただ遠くからだけではあるが、部屋のなかを前よりもよくのぞくことができた。二人は格子塀にしっかとつかまりながら、石の土台の上をあちこちとかけ廻り、次にまた立ちどまって、哀願するように両手を合わせてKのほうへのばすのだった。自分たちの努力の無益なことを考えようともせずに、彼らはそんなことを長いあいだやっていた。まるで眼がくらんでしまったようだ。彼らを見ないでもすむようにと思って、Kが窓のカーテンを下ろしたときにも、二人はまだそれをやめなかった。



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