第十九章
エルランガーが開いたドアのところに立って、彼に合図をしなかったならば、彼はおそらくビュルゲルの部屋を出たときと同じようにエルランガーの部屋の前も無関心に通り過ぎてしまったことだろう。エルランガーのその合図は、人差指でちょっと、ただ一回だけやったものだった。エルランガーはすでにすっかり出かける用意ができて、首にきっちりと合った、上のほうまでボタンがかかる襟の、黒い毛皮の外套を着ていた。一人の従僕がちょうど彼に手袋を渡したところで、その従僕は彼の毛皮の帽子をまだ手にもっていた。
「あなたはとっくにきていなければならなかったのですよ」と、エルランガーはいった。
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