三
死刑囚!
ところで、それがどうしていけないか。私は何かの書物の中で読んだのであるが、ためになることはただそれだけだったのを覚えている。すなわち、人はみな不定期の猶予つきで死刑に処せられている。それではいったい私の地位に何がこんな変化をもたらしたのか。
私に判決がくだされた時から今までに、長い生涯を当てにしていたいくばくの人が死んだことか。若くて自由で健康であって、某日グレーヴの広場で私の首が落ちるのを見に行くつもりでいた者で、いくばくの人が私より先立ったことか。今からその日までの間に、戸外を歩き大気を吸い自由に外出し帰宅している者で、なおいくばくの人が私に先立つことだろうか。
それにまた、人生は私にとってなんでこんなに名残り惜しいのか。実際のところ、監獄の薄暗い日と黒いパン、囚人用のバケツから汲み取られた薄いスープの分け前、教育を受けて啓発されてる身でありながら、手荒く取り扱われ、看守や監視らから虐待され、ひとこと言葉をかわすにたりる者と思ってくれる一人の人もなく、自分のしたことに絶えずおののき、人からどうされるだろうかということに絶えずおののいている、ただほとんどそれだけのことが、死刑執行人が私から奪いうるものではないか。
ああ、それでもやはり、恐ろしいことだ!
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