ヴィクトル・ユゴー 死刑囚最後の日


       三八

 一時十五分だ。

 私はいま次のような感じを覚える。

 激しい頭痛。寒い腰と、燃えるような額。立ちあがったりかがみこんだりするたびに、脳のなかに液体でもはいってるような気がし、そのために脳みそが頭蓋骨の内側にぶつかるような気がする。

 痙攣(けいれん)的な身震いがする。そしてときどき、電気にでも打たれるようにペンが手から落ちる。

 煙のなかにでもいるように目がひりひり痛む。

 肱の具合が悪い。

 もう二時間と四十分、そうすれば私はすべて回復するだろう。




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