海の泡から生れたヴィナス
ブリキ製の緑の棺からのやうに、褐色の髪に
ベトベトにポマード附けた女の頭が、
古ぼけた浴槽の中からあらはれる、どんよりと間の抜けた
その顔へはまづい化粧がほどこされてゐる。
脂(あぶら)ぎつた薄汚い頸(くび)、幅広の肩胛骨(かひがらぼね)は
突き出てゐるし、短い脊中はでこぼこだ。
皮下の脂肪は、平らな葉のやう、
腰の丸みは、飛び出しさうだ。
脊柱(せすぢ)は少々赤らんでゐる、総じて異様で
ぞつとする。わけても気になる
奇態な肉瘤(こぶ)。
腰には二つの、語が彫つてある、Clara Venus と。
――胴全体が大きいお尻を、動かし、緊張(ひきし)め、
肛門の、潰瘍は、見苦しくも美しい。
この本を、全文縦書きブラウザで読むにはこちらをクリックしてください。
【明かりの本】のトップページはこちら
以下の「読んだボタン」を押してツイッターやFacebookを本棚がわりに使えます。
ボタンを押すと、友人にこの本をシェアできます。
↓↓↓