こうして彼は歩みをつづけていった。しかし、長い道であった。つまり、村の大通りであるこの通りは、城のある山へは通じてはいなかった。通りはそこの近くへ通じているだけであり、次にまるでわざと曲がるように曲がってしまっていた。そして、城から遠ざかるわけではないのだが、近づきもしなかった。これでやっと通りは城のほうへ入っていくにちがいない、とKはいつでも期待するのだった。そして、そう期待すればこそ、歩みをつづけていた。疲労のために、この道をいくのをやめることをためらっているようであった。どこまでいっても終ろうとしないこの村の長さに彼は驚いてもいた。次から次へと小さな家々と凍(い)てついた窓ガラスと雪とがつづき、人気(ひとけ)はさっぱりなかった。――とうとうこのしつっこい通りから身体を引きちぎるようにして離れ、狭い小路へと入っていった。そこは雪がいよいよ深く、沈んでいく足を抜き出すことはむずかしい仕事で、汗がどっとふき出てきた。彼は突然立ちどまり、もうこれ以上は歩みをつづけられなくなった。
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