「むろんそうでさあ」
だが、しばらくして男はいった。
「お望みならば、わしがあんたをわしのそりでつれていってあげるがね」
「どうかそうしてくれないか」と、Kは悦んでいった。「いくらくれろというんだね」
「一文もいらないよ」と、男がいう。
Kはひどく不思議に思った。
「なにしろあんたは測量技師だからな」と、男は説明するようにいった。「で、お城の人というわけさ。ところで、どこへいきなさるのかね?」
「城へだよ」と、Kはすぐに答えた。
「それじゃあ、いかないよ」と、男はすぐさまいった。
「でも、私は城の者だよ」と、Kは男自身の言葉をくり返していった。
「そうかもしれないが」と、男は拒絶するようにいった。
「それじゃあ、宿屋へつれていってくれないか」と、Kはいった。
「いいとも」と、男がいった。「すぐそりをもってくるよ」
こうしたすべては、かくべつ親切だという印象を与えるものではなく、むしろ、Kをこの家の前の広場から追っ払ってしまおうという、一種のひどく利己的で小心な、そしてほとんどひどくこだわっているような努力をしているのだ、という印象を与えるものであった。
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