Kは、やはりここで夜を過ごそう、しかし、泊めてもらう以外にはこの家族に何一つサービスしてもらうまい、と決心して、窓辺の台へ腰を下ろした。彼を追い払ったり、あるいは彼を恐れていた村の連中は、彼にはこれよりも危険が少ないもののように思われた。というのは、村の連中は、根本において自分自身だけにたよるように彼に教えたのであり、彼が力を集中しておくように助けてくれたのだった。ところが、こんな見かけの援助者たち、つまり、彼を城へ案内するかわりに、けちな仮装芝居を打って自分たちの家庭へつれてくるような人たちは、欲すると欲しないとにかかわらず、彼を目的からそらしてしまい、彼の気力を破壊することに一役買っているのだ。家族のテーブルから、こちらへどうぞ、という誘いの呼び声がかけられたが、それを彼はまったく無視し、頭を垂れたまま、窓辺の台に残っていた。
すると、オルガが立ち上がった。これは姉妹の優しいほうの娘で、また娘らしい当惑の色を示してもいたが、Kのほうにやってきて、食事にきてください、と頼んだ。パンとベーコンとが用意してあります、ビールももってきましょう、ということだった。
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