フランツ・カフカ 城 

「もう十分私の顔は見ただろう」と、Kは何か不快な感情を払いのけようとしながらいった。そして、ちょうどフリーダがもってきた服と靴とを受け取り、それを身につけた。フリーダのあとからは、おどおどした様子で二人の助手がついてきていた。フリーダが助手たちのことを我慢していられるのが、前からずっとKには理解できなかったが、今度もまたそうであった。彼女は、内庭で服にブラシをかけているはずの助手たちをかなり長いあいだ探したすえ、下の食堂でのんびり昼食のテーブルについているのを見つけ出したのだった。まだブラシをかけてない服は丸めて膝の上に置いてあった。そこでフリーダは自分で服や靴にブラシをかけなければならなかった。それでも、下層の連中をうまく扱うことを心得ている彼女は、彼らとがみがみいい合いなどはしなかった。そればかりか、彼らのいる前で、このたいしたなまけぶりについてちょっとした冗談でもあるかのように話し、まるで媚(こ)びるように、一人の助手の頬を軽くたたくようなことまでするのだった。Kは近いうちにそのことで彼女をとがめてやろうと思った。だが、今はもう出かけていかねばならぬ時間だった。



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