「ああ、測量技師さんね」と、微笑しながらいって、彼に手をさし出し、自己紹介した。「あたし、ペーピーっていうんです」
娘は小柄で、赤い顔色をしていて、健康そうで、赤味がかったブロンドの豊かな髪は、きりっとお下げに編んであり、その上、顔のまわりにちぢれていた。ねずみ色のつやのある生地でつくった、ほとんど似合わない、なめらかに垂れ下っている服を着ていたが、下のほうは一つ目で終っている絹リボンによって子供らしく不器用にしめつけているため、きゅうくつそうだった。娘はフリーダのことをたずね、彼女はすぐにもどってこないだろうか、ときいた。これは、ほとんど悪意と境を接しているような質問だった。それから、いった。
「あたし、フリーダが出ていくとすぐ、急いでここにくるように呼ばれたのよ。だれでもいいからここで使うというわけにはいかないのですものね。それまでは客室つきの女中だったんですが、ここへきたことはあまり変りばえがしないのよ。ここでは晩から夜へかけての仕事がたくさんあって、とても疲れるわ。ほとんど我慢できないことでしょう。フリーダがここの仕事を捨てたことは、あたしにはちっとも不思議じゃないわ」
「フリーダはここでとても満足していましたよ」と、Kはいった。それはペーピーに、この子とフリーダとのあいだにあるのにこの子がないがしろにしているちがいをようやく気づかせてやろうとしたのだった。
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